ITS & Automotive Systems

本ブログは Research & Consulting on ITS/Automotive Systems (www.sakuraassociates.com) のコメンタリーとインタビューのサイトです。ご投稿は敬意を以って歓迎、尊重致します。Norio Komoda 製作開始 2006年1月、公開 2007年1月

September 05, 2006

米国ナビの普及動向 (その1)

はじめに

ITS 機器の普及台数は、その国のITS 実用化の強さの指標である。米国で ITS 機器が近年盛んに市販され始め、今、ITS 関係者の誰もがその市場動向の実態を知りたく思っている。

US DOT: Department of Transportation Volpe Research Center (注1) は独自調査を行い、20061月付で最新 (2005年迄の) ITS関連の情報システム、エンターテイメント機器、および諸安全システムの市場動向の調査報告を作成し、2006年夏に公表した(注2)。

注1: Volpe Research Center1970年創立。Boston都市圏西のCambridge, Massachusetts州にあり、MITに隣接。創立者は第2DOT長官のJohn A. Volpe。創立者の名を取り、John A. Volpe National Transportation Systems Centerと呼称。US DOTに所属する研究機関で、US DOTNASAからの研究委託が多い。昨年、新設のUS DOTの中のRITA: Research and Innovative Technology Administrationに所属することとなった。Volpe Centerには、US DOTの中のFHWANHTSAFAA、他の各局からの研究委託もあるが、それらの各局は、また、自局の研究所も持っている。
http://www.volpe.dot.gov/index.html
参照。
注2: Private Sector Deployment of Intelligent Transportation Systems: Current Status and Trends: Final, 2004-2006 Volpe Report for ITS JPO, US DOT, February 2006

私は、かねて、それらの動向を捉えたかった。然し、米国ではそうした民間機器市場統計値の詳細は、マーケティング調査会社に有料で調査依頼するか、既存の有料調査報告書を購読する他ない。Volpeのこの調査報告書は、これに関する様々なメディア、文献、ITS関連会議やその展示ブース等における断片的情報を丹念に収集し、総まとめを行った貴重な賜物である

私は、Volpeには知己があったので、その調査研究を行ったVolpeJane Lappin女史と事前にEmailによる質疑・討議を交換した後、この夏、Volpe Centerに同女史を訪ねて面談の機会を得た。また、ITS World CongressSAE:米国自動車技術会やCES: Consumer Electronics Show等の展示会において、ナビメーカや地図データベース会社の展示ブースを訪れ、市場状況についてヒヤリングを行った。更に、自動車の電子機器やITS市場動向に敏感なメディアのPaul Hansen氏と面談し、同氏の発行するHansen Reportで引用された米国の市場アナリスト:Strategy Analytics社、地図データベース会社等から、米欧日のナビ普及について次の情報を抽出した:
OEMナビの新車販売車の装着率
OEM装着ナビ、および携帯ナビの市場動向

ここでは、それらの情報に基づき、米国ナビの普及状況と予測に触れ、今後の動向について考察致したい。

OEMナビの新車販売車の装着率

Volpe。の報告書に引用されている米国電子機器関連メディアであるHansen Reportの中のStrategy Analytics社の情報によると、OEMナビの新車販売の装着率は下図の通りである。この中で、2010年の予想は、OEMナビのオプション価格が、現在$1000-2000であるのに対して、より低価格帯:$500レベルの出現を前提として調査を行っている。縦軸は%。
















注:上図は下記の源データを図示したもの:
 ・2005年: 北米は8%、欧州は9%、日本は32%
 ・2010: 北米は14%、欧州は18%、日本は44%
なお、本資料の新車の定義が記述されていないが、日本自動車工業会の資料によると、2004年の四輪自動車販売台数は北米約190万台、日本約60万台である。

米国OEMナビと携帯ナビ (P Nav) の伸張予測

20061018日、SAE Convergence Detroit(米国自動車技術会電子システム関係の会議)に出席した折、欧米を主とした地図データベース会社:TeleAtlas社のSenior Marketing Managerの好意で、米国OEEナビ(OEM Nav)と携帯ナビ(P Nav)の販売動向と予測について、コンピュータによるプレゼンを受けた。それによると下図の通りである。
注:本図において、
・縦軸は、年間販売台数
x1000/年(累積数では無く、年間販売台数)

2005年迄は実数。2006年以降は予測。

・同社は現状ナビと価格帯を、下記3種 に分類し、1)と3)について今後の価格帯と内容にある仮定を置いて市場予測調査を行ったと見られる。その性能やコンテンツ等の前提は不詳である。

1)
Portable Nav$199-999
2)
In-Dash After Market$1,000-2,300:米国では僅少。
3)OEM In-Dash Nav:$1,600-3,000
















米国ナビ普及の位置付けに関する考察


(1)ナビは好評で、ITS関連の民間車載エレクトロニクス機器の販売の中でもトップ水準に位置する。
(2)
米国のOEMナビ(自動車メーカが工場搭載する車載ナビ)は、日本で1987年のDigital Mapを用い た車載ナビが最初に登場し、1996年のVICSによる交通情報がナビ画面に登場した中間くらいの時 点で、累積200-300万台あたりの第1次ヒットの時期に当たる。しかし、米国では、日本の当時とは異なる要因が少なくとも2つあり、今後の見通しを総括するには尚早である。即ち、
 -アフターマーケットタイプの携帯ナビ(Pナビ)市場に異常な伸張がある。

 -交通情報が同時に提供され始めている。

(3)米欧日の新車販売車への車載ナビ装着率の現状と2010年予測は順調で、US DOTVolpe Centerの把握によれば、2004年の米国推定市場は850,000ユニットで、2010年は3.57Mユニットと推定されている。